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誰も鉛筆の作り方を知らない。誰も鉛筆を作るように命令されない。

語り手の[鉛筆]が、鉛筆が供給される不思議にいざなう。意外にも鉛筆は複雑な製造過程を経て生み出されるし、木の伐採や運搬にどれだけの人と手数が必要なのかを思うと、誰も鉛筆の製造の全工程を知らないと言える。自由な個人が、政府に命令されるなどせず(…

猿の章

7年前に書いた『蛙』という掌編(http://nakanotaku.hatenablog.com/entry/20120917/1347815563)を下敷きに、「猿」というお題で書いてみました。原稿用紙1枚半ほどの掌編です。 雨に濡れた猿が、ゆっくり呼吸をしている。しずくが鼻先から唇に落ちる。 井…

夏の初め

木漏れ日の下 小さな力こぶの浮き立った 十五くらいの若人らが 酒をぐびり、ぐびり。 唇の周りのか細い無精髭に だらしなく雫が残っている。 僕と三つも変わらぬ若人らは めいめいどこで通過儀礼を経てきたのか ――おやじの理不尽な暴力?―― 子に特有の よそ…

鎮魂

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秋の木漏れ日

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人生に疲れてたばこをやめることにしたおじさんが カラカラカラと飴を口の中で鳴らしている。 おじさんには小さな娘さんがいる。 百色の色鉛筆よりもふしぎな色をした よろずの色の飴袋から 大切に一粒ずつ、 大きな粒を小さな口に頬張っている。 奥さんは …

眠り続ける

幼かった時分の夏の記憶。 私は、遠くにいる母を、おうい、おういと呼んだのに 声は、母に届かず消えてしまう。 黄色い太陽の下、私は半泣きで、 声が届かぬ意味を解せなかった。おとなになって、 私がいつも思うのは黄色い太陽。 眩しい朝日は ばかばかしく…

Essay Practice: Euthanasia

数週間前に僕が書いた英文エッセイで、公開せずに眠っていたものです。テーマは安楽死です。賛成の立場で書いています。(語学面で)自分の生徒の模範となるように書きました。論拠は、生徒の思いついたものの域を出ていません。もちろん哲学的な議論には程…

対訳版 オバマ大統領 広島演説

LIVE: Obama speaks at Hiroshima memorial 以下は2016年5月27日、アメリカ合衆国大統領バラク・オバマ氏が広島を訪問した際の演説の全訳である。原稿にはザ ・ニューヨーク・タイムズの記事、"Text of President Obama’s Speech in Hiroshima, Japan"を用い…

全訳 オバマ大統領 広島演説(和文のみ)

LIVE: Obama speaks at Hiroshima memorial 以下は2016年5月27日、アメリカ合衆国大統領バラク・オバマ氏が広島を訪問した際の演説の全訳である。原稿にはザ ・ニューヨーク・タイムズの記事、"Text of President Obama’s Speech in Hiroshima, Japan"を用い…

全訳 The Spoils of Happiness

The New York Timesに掲載された、哲学者David Sosaによる"The Spoils of Happiness"と題された論説の全訳です。「幸せとは何か」という問題が、ある思考実験を手がかりに考察されます。記事がネットに公開された日付日時は、2010年10月6日午後7:30です。 Th…

History and Literature vs Science and Mathematics (English Essay Practice)

Do you agree or disagree with the following statement? It is more important for students to study history and literature than it is for them to study science and mathematics. Use specific reasons and examples to support your opinion. At sc…

桜(2015年5月10日加筆修正)

(2016年4月2日、花冷えの夜に書いた詩(前のエントリ)を加筆修正したものです。)二十年前、父は末期の癌だった。遠い山並に小さく満開の桜を見やり、「今年の桜が最後か」と言った。その年の六月、父は逝った。私はそれから何年も、桜を見るたび、鼻の奥…

即興詩 桜

二十年前、父は末期の癌だった。 遠い山並に小さく満開の桜を見やり、 「今年の桜が最後か」と言った。 その年の六月、父は逝った。 爾来、わたしは桜を見るたび、 鼻の奥がつんとするような哀しみを憶えてきた。 しかし。 わたしが三十を過ぎた頃からだろう…

岡真理『記憶/物語』(2011年2月14日に執筆)

あしたのための声明書|自由と平和のための京大有志の会 http://www.kyotounivfreedom.com/manifestofortomorrow/ … ひとりの国民として、強く支持する。 発起人のひとりである岡真理さんの著作『記憶/物語』には、数年前に圧倒された。現在、最も信頼でき…

捕鯨についての考察

「国際的な批難にもかかわらず」日本の捕鯨船が南極海に向けて出発したことをBBCが12月1日付けで大きく報道した。また、アル・ジャジーラ・イングリッシュも、11月から12月にかけて、この問題に大きな関心を寄せつつ報道した。この物議を醸す問題について、…

Japan's Naive Nationalism(日本語訳)

私自身はテレビを全く見ないが、日本の「独特さ」を特集したテレビ番組が日本の人たちの間で大いに人気であるそうだ。テレビ関係者は、国家への帰属意識を視聴者に植え付けようと躍起になっているようだ。もっとも視聴者の大部分は、コインの裏面にはほとん…

Japan's Naive Nationalism

I never watch television, but I’ve heard tell that TV programs featuring Japan’s “uniqueness” are hugely popular among Japanese people. Television producers seem to be seeking to instill a sense of national belonging in the audience, most …

地球規模の慈善事業と資本主義の妖しき蜜月(The dark alliance of global philanthropy and capitalism)

2015年12月1日付けで発信された、アル・ジャジーラのオピニオン欄の翻訳です。2000字を超える、やや長めの文章ですので、お時間のあるときにどうぞ。原文はこちら。→The dark alliance of global philanthropy and capitalism - Al Jazeera English 慈善事業…

シェイラ・ヘティ 『わたしの生は冗談』

THE NEW YORKER MAY 11, 2015 ISSUE に掲載された、MY LIFE IS A JOKE BY SHEILA HETI の翻訳です。http://www.newyorker.com/magazine/2015/05/11/my-life-is-a-jokeわたしが死んだとき、それを見ているのは、周りに誰もいませんでした。それは、全然構いま…

アティーク・ラヒーミー『悲しみを聴く石』

悲しみを聴く石 (EXLIBRIS)作者: アティークラヒーミー,Atiq Rahimi,関口涼子出版社/メーカー: 白水社発売日: 2009/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 19回この商品を含むブログ (12件) を見るすごい小説だ。日本ではほとんど知られていない作家であろ…

マリオ・バルガス=リョサ『若い小説家に宛てた手紙』

若い小説家に宛てた手紙作者: マリオバルガス=リョサ,Mario Vargas‐Llosa,木村栄一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2000/07メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 23回この商品を含むブログ (29件) を見る若い、小説家志望の人に手紙を通して語りかけるという…

矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか作者: 矢部宏治出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2014/10/24メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (31件) を見る著者はこの分野の専門家ではないが、多くの公文書や国内…

安部公房『砂の女』 

砂の女 (新潮文庫)作者: 安部公房出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/03メディア: 文庫購入: 19人 クリック: 197回この商品を含むブログ (339件) を見る 安部公房の『砂の女』を再読した。 昆虫採集を趣味とする、教師である男がいた。かれは、砂に惹かれ…

TIME誌 Jan. 20, 2014カバー ジャネット・イエレン 16兆ドルの女性

今週のTIME誌のカバーストーリーは、第15代FRB議長になるジャネット・イエレンについての特集です。(以下リンク先)FRB創設101年目にして、初の女性議長です。http://content.time.com/time/subscriber/article/0,33009,2162267,00.html 現在、米国の失業率…

東京新聞に応募した「300字小説」です。

東京新聞に応募した「300字小説」です。この長さだとほとんど何も書けないんだけれど、たまに挑戦してみたくなります。 ――――― かれは、生ぬるいビールを嚥下する。温かい息が、煙草の臭いと混じる。黄色い目はとろりとして、どこでもない一点を見つめている…

緩やかさ

[書評]緩やかさ作者: ミランクンデラ,Milan Kundera,西永良成出版社/メーカー: 集英社発売日: 1995/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (5件) を見るこの小説が好きだ。私は、思考が挑発されるのを感じるから。(つまりは、自ら…

ジャック・ロンドン 『火を熾す』

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)作者: ジャック・ロンドン,新井敏記,柴田元幸出版社/メーカー: スイッチ・パブリッシング発売日: 2008/10/02メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 32回この商品を含むブログ (42件) を見る 生涯を通して200本…

バズ・ラーマン監督 『華麗なるギャッツビー』

小説を元にした映画というのは、往々にしてその小説の読者にがっかりされるものだ。 しかし、この映画『華麗なるギャッツビー』は、原作の小説を愛する僕にとっても大満足の作品だった。 1922年のニューヨーク。アメリカは空前の好景気を謳歌していた。富は…

岩井俊二監督 『スワロウテイル』

僕が子供だったとき―80年代の終わりから90年代の初めにかけて―小学校では「未来の日本」をテーマにした絵を描かされたものだ。絵の中では、翼のある車が空を飛んでいて、華やかな空中庭園があった。後の子供たちもこんな絵を描かされたのだろうか。いや、き…

TOEFL エッセイ 練習1

模範解答と比較したらとても下手なエッセイですが(模範解答を読んだら恥ずかしくなりました)、これから上達していくという決意をこめてここに公開します。30分が制限時間ですが、少しだけオーバーして書きました。辞書などは勿論使っていません。 Do you agr…

2008年 一橋大学 自由英作文模範解答

★ 2008 一橋大学 前期 Write 120 to 150 words of English about one of the topics below. Indicate the number of the topic you have chosen. Also, indicate the number of words you have written at the end of the composition. 1. Japanese people n…

村上春樹 『約束された場所で underground 2』

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2001/07メディア: 文庫購入: 14人 クリック: 73回この商品を含むブログ (126件) を見る 宗教的理想郷の対極にある現実世界は、入り組んでいて、理不尽だ。それが…

(暫定) 2013年度 京大英作文模範解答

今年の京大入試の英作文を僕がざっと訳したものです。参考にしてくだされば、あるいは、忌憚なきご批判をちょうだいできれば。 今日、睡眠不足は見過ごせない問題となっている。原因の一つは、社会全体が深夜も多くの人が起きていることを想定して動いている…

物語の断片

人は生きられなかった生を生きるために文学を書くのだ、と誰かが書いていて、思わず考え込んだ。 僕が生きられなかった生とは、偶有的な生の集合だ。必然的に見える生を生きる僕が、偶有的な生の集合の元をひとつ手繰り寄せ、その生を物語ることで生きてみせ…

平野啓一郎 『空白を満たしなさい』

空白を満たしなさい作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/11/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 17人 クリック: 600回この商品を含むブログ (62件) を見る 生きていることの掛け替えの無さが、鮮やかに描かれたすばらしい小説。 ある…

夢の話

こんな夢を見た。 山の頂で、少女が音楽を待っていた。黄昏が近かった。 頂の向こうからロープウェイが登ってきた。中では老紳士がフルートを吹く仕度をしている。少女に音楽を届けてやろうと大急ぎで銀色の楽器を組み立てている。 老紳士のフルートの調べは…

平野啓一郎 『私とは何か―「個人」から「分人」へ』

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/14メディア: 新書購入: 19人 クリック: 299回この商品を含むブログ (78件) を見る 通常私たちが、自身を「私」として捉える時、それは統合され…

チャールズ・ディケンズ 『クリスマス・キャロル』

クリスマス・キャロル (新潮文庫)作者: ディケンズ,村岡花子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/12/02メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る 僕は年末年始が大嫌いだった。欧米で「クリスマスが嫌い」というような偏屈…

チェーホフ 『かもめ』

かもめ (集英社文庫)作者: アントン・パーヴロヴィチチェーホフ,沼野充義出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/08/21メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る 何てチャーミングな戯曲だろう。 登場人物たちの叶わぬ片思いの連鎖、循…

スラヴォイ・ジジェク 『ラカンはこう読め』

ラカンはこう読め!作者: スラヴォイ・ジジェク,鈴木晶出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2008/01/30メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 216回この商品を含むブログ (84件) を見る 本書は、ラカンの難解な概念の解説書ではない。帯にあるように「入門書…

野間俊一 『身体の時間 〈今〉を生きるための精神病理学』

身体の時間―“今”を生きるための精神病理学 (筑摩選書)作者: 野間俊一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/09メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (7件) を見る 精神科医が心について記述するとき、彼らは私たちの身体的な側面、動物的な…

廣松渉 『今こそマルクスを読み返す』

今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書)作者: 廣松渉出版社/メーカー: 講談社発売日: 1990/06/12メディア: 新書購入: 10人 クリック: 65回この商品を含むブログ (46件) を見る 私はマルクス主義者ではないし、廣松とも世界観を異にする。それでも、本書…

沼野充義編著 『世界は文学でできている』

世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義作者: 沼野充義出版社/メーカー: 光文社発売日: 2012/01/18メディア: 単行本 クリック: 26回この商品を含むブログ (17件) を見るチェーホフやナボコフの翻訳で著名なロシア文学者の沼野充義氏と、作家…

秋の終わりに オリオン座の流れ星

三日前、オリオン座の星雲で流れ星が見られると聞いた。深夜の零時から一時頃が見頃だというので、私は零時半頃に仕事から帰ってから、家の前でずっと空を見上げていた。 オリオンには一等星が二つあるが、随分と小さくて弱々しく光っていると思った―と同時…

チェーホフ短篇集 沼野充義訳

新訳 チェーホフ短篇集作者: アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ,沼野充義出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/09/24メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 10回この商品を含むブログ (19件) を見る さまざまなテーマの―したがって、それらの魅力…

メル・ギブソン監督 パッション・オブ・ザ・クライスト 岩井俊二監督 ラブレター

The Passion of the Christ(『パッション』)10月3日鑑賞 邦題は『パッション』。英語で、the Passionは、イエス・キリストの受難を表す。メル・ギブソン監督のアメリカ映画だが、セリフはすべてラテン語とアムル語。当時の空気感を、イエスの存在感を立体…

『哀しみ』 (東京新聞公募の「300文字小説」)

東京新聞の日曜版に連載の「300文字小説」に応募した作品です。タイトルは、ちょっと考えあぐねたけれど、『哀しみ』としました。日曜の朝からこんなの喜んで読む人いないと思うけど、まぁいいや。 冷たい雨が落ちてきた。Tは、カーキー色の上着の中で、身を…

月夜、酔った夜に。

月の光を眺めていた。光雲が月を霞めて漏れる光は淡く、淡く酔った私を撫でている。真暗な雲と眠らぬ夜を寡黙に照らす月を人は太陽の輝きの反映と解明しシャトルをそのみじめな衛星に飛ばし潜在敵国をして威嚇せしめた。人類は途方もなく狡知で途方もなく愚…

岩井俊二 『ヴァンパイア』

インターネットで自殺志願の女を募り、彼女たちの血液を抜いて、その血液を飲む…。これはもちろん、利他的な自殺幇助では全然なくて、歪んだ性欲の発露、利己的な行為に違いない。実際、ウェブサイト上で、「ヴァンパイア(吸血鬼)」と名指される彼自身、そ…