Taku's Blog(翻訳・創作を中心に)

英語を教える傍ら、翻訳をしたり短篇や詩を書いたりしたのを載せています。

TIME誌 February 27, 2012 まとめ(その2)

 2012年アメリカ合衆国大統領共和党予備選挙についての記事です。TIME誌は世界中で読まれていますが、アメリカの雑誌なので、アメリカ国内の記事は、多くのことを「知っていること」を前提に書かれています。(逆に、他国の記事は、その国の事情の多くの「知らないこと」を前提に書かれてあるから読みやすいです。もっとも、基本的な世界の地理や歴史の知識は欠かせませんが。)だから、アメリカの政治記事は特に読むのが難しいのですが、この記事を要旨と、アメリカの政治の記事を読むときに知っておくべき、この記事に出てきた英語の表現を紹介します。

「波に乗るリック」"Rick's Roll"

 共和党予備選挙に出馬しているRick Santorum(リック・サンドラム)、共和党の大統領候補はずっとミット・ロムニー(あるいは、次点で、ベテランのニュート・ギングリッチ)が本命で、リック・サンドラムがここまで支持を集め、有力な候補になるとはほとんど誰も予想していませんでした。ロムニーの地元であるミシガンでは予備選が2月28日に行われますが、ここでもサンドラムはリードを保っています。ロムニーにとっては、地元ミシガンで負けるようなことがあれば、決定的なダメージになるでしょう。

 実業家として大成功を収めたロムニーに対し、サンドラムはお金をかけない選挙戦を展開し、ブルーカラーからの支持を集めています。サンドラムは、キリスト教カトリックの右派(保守派)。宗教的な理由から、同性婚(gay marriage)にも妊娠中絶(abortion)にも強く反対しています。選挙戦において、彼はこうした問題(social issues)に力点を移しましたが、TIME誌は、「実績あるビジネスマン(=ロムニー)以上の人物を自分たちは求めているのだと、共和党員に思い起こさせているかもしれない」と分析しています。オバマ政権の保険制度が、教会を除く宗教団体にも、職員の受ける避妊サービスを保険でカバーするよう要求していた(2月10日に、宗教団体は除外すると発表)ことで、ロムニーがかつて中絶支持(pro-choice)であったことも話題に上るようになりました。サンドラムは、共和党の保守的なポピュリスト集団である「ティーパーティー」からの支持も取り付けています。

 「スーパー・チューズデイ(Super Tuesday)」とは、2月または3月に多数の(今回は11)州で予備選が集中する火曜日のことで、大統領候補指名を目指す選挙戦の中では、きわめて重要な一日です。サンドラムは、(金を掛けずに戦える)ジョージア、オクラホマ、ノース・ダコタ、テネシー、アイダホに照準を合わせているとのこと。今年のスーパー・チューズデイは3月6日です。

 この記事を読むのには、ある程度の事前知識が必要です。ウィキペディアの「2012年アメリカ合衆国大統領共和党予備選挙」の項目および、そこからのリンクで有力候補者の略歴を読んでおくと、このTIME誌の記事の読みやすさが全然違うと思います。

(英語表現 特にアメリカの政治記事を読む「背景知識」として必要なものを中心に。)

coronation: 戴冠(大統領候補への指名の暗喩)
pollster: 世論調査員(サンドラムは世論調査員を雇用していません)
social conservative: 共和党のキリスト教右派の超保守団体。中絶反対は主要な主張のひとつ
K Street: ワシントンD.C. にある、シンクタンクロビイストのオフィスが集まる通り
purple-to-blue state: 支持層なしから民主党支持にかけての州(ウィキペディアの「赤い州・青い州」参照)
spending bill: 歳出法案
a natinal "right to work" act: 雇用条件として労働者に組合加入と組合費の支払いを義務づける組合保障協定を定めた労働協約の交渉を禁止する法案。サントラムはこれに反対、2006年にはこれも響いて上院選で敗北。
the Rust Belt: さび地帯。(昔は鉄鋼や自動車産業で栄えたがその後は不況に喘ぐ、米国中西部、北東部を中心とする工業地帯。ウィキペディアで地図を含め参照できます。)
a skimpy war chest: ごくわずかの軍資金(サンドラムの選挙戦を特徴付けます)
bet the ranch on...: (米俗)すべて(全財産)賭ける (Gingrich probably made a tragic mistake when he be the ranch on Florida and lost.) ranchはもとは「放牧場」の意。
barnstorm: 地方遊説する (While Romney and Gingrich dueled in Florida, Santorum barnstormed Minnesota, Missouri and Colorado and snatched race-changing wins in states no one else had considered worth the fight.)
cakewalk: 楽勝
a spot: 候補者の短いテレビ広告
deep-pocketed: 豊富な資金のある
flay: 酷評する
"Rombo": サンドラムが、ロムニーに対して使ったネガティブ・キャンペーンでのフレーズ。もちろん、80年代の映画"John Ranbo"―力で全てを解決しようとするマッチョな男―を念頭に置いています。
 Romney's tin-eared affluence: ロムニーの、大衆の気持ちが分からないほどの豊かさ(tin earは、ボクシングなどで潰れた形の耳。tin-earedは、日本語の「空気が読めない」―僕は大嫌いなことばですが―に近いかもしれません)
 clean up: 大勝する
 stature: 名声
 everyman: ごくありふれた人間。(ブログには時間がなく上げていませんが、本誌のホイットニー・ヒューストンの追悼記事では"everywoman"という語が使われています) Santorum's advisers concede that his everyman style doesn't fit the Hollywood image of a President quite the way Romney does...But Santorum's advisers believe that in this anti-elite moment, a little populism can go a long way.
running mate: 副大統領候補 (この記事の結びです。Appeal to blue collar Catholics is quite an asset in a presidential election. It's one reason Obama chose Joe Biden as his running mate.) もちろん、サンドラムは、ブルーカラーカトリックに訴える人物として紹介されているのです。