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TIME誌 February 20, 2012 まとめ

英文ニュース

 

定期購読しているTIME誌が昨日配送されました。グラミー賞などの賞の授賞式が相次ぐ時期とあって、TIME誌は、錚々たる俳優(ジョージ・クルーニーブラッド・ピットなど)のグラビアを掲載(インタビューはこちら)。その分、ニュース記事は少なく、すぐに全部読み終えてしまいました。以下、記事の簡単な紹介と、英語の表現のピックアップ。


「ヨーロッパで最も重要な男」(カバーストーリー) "The Most Important Man in Europe"

 イタリアの新首相、マリオ・モンティを「ヨーロッパにおける最重要人物」と紹介。背景にはもちろん、ユーロの危機、イタリアの膨大な財政赤字があります。(GDPの120%。ちなみに日本の財政赤字は対GDP比で200%を超えています。最大の懸案国ギリシャは、170%近くで、10年債の利回りは35%以上あります)ギリシャの財政危機でもあれだけの大騒ぎになったのに、ギリシャよりはるかに大規模な経済(ユーロ圏で3位)の国イタリアは、債務不履行に陥ると、ユーロの制度が崩壊する。イタリアにおける財政危機は、党派の対立を「休戦」に至らせました。イタリアは、他のヨーロッパ諸国が救済するには「大きすぎる」国でもあるのです。(イタリアの救済には9000億ドル必要との試算もあります。)モンティ首相は、かつてのサッチャー(日本では小泉純一郎)を思わせる、過激なほど徹底的な経済改革に着手しています。「上流階級で、常に著名人とサロンで社交をして生きてきたモンティに、一般庶民の気持ちが分かるはずがない」という声に、モンティは驚くべき応答をします。「そうかもしれない。だが、これまでの政権は、一般庶民に近すぎたゆえ、すべての人の要求を満たそうとしすぎたゆえ、そして、そのことによって将来世代の利益を蔑ろにしてきたゆえに、イタリアは債務を膨らませてきたのだ。」モンティ氏就任後、イタリアの10年物国債の利回りは、7.1%から5.6%に低下(国債価格は上昇)しました。

charge: (vi)突進する
enfeebled≒weakened
the embattled shared currency: 困難な状況下の共通通貨
inexorably entwined: 不可避的に絡まっている
a common denomination:(元は「(通分したときの)公分母」より)集団全員に共有される特徴、共通点
off the wall:(米語)風変わりだ、奇抜だ
a window of opportunity:(報道用語)今しかない好機

「衝突するシリアの軍隊」"Syria's Clashing Armies"

アサド大統領が支配するシリア―ロシアからの武器供与を受けています―に対立する「自由シリア軍(the Free Syrian Army)」の一筋縄ではいかない事情を紹介しています。戦闘地域では、自由シリア軍レバノン、トルコ、ヨルダン、イラクから秘密裏に入ってきた武器で戦っています。国外に脱出する男性はすべて、自由シリア軍の「次期」兵士です。一方で、自由シリア軍は統率されていません。既存のリーダーとは別の軍人が、シリア解放のために新しい評議会を立ち上げました。11ヶ月を経た今もなお、戦闘はより複雑な構図で続いています。

clandestinely:(違法なことを)秘密裏に
Kalashnikov: ロシア製の機関銃
have no compunction about: 〜することに恥も罪悪感もない
obliterate: 殲滅する

「昵懇なる拮抗国」"Friendly Rivals"

 今日(2月14日)、中国の次期国家主席である習近平(Xi Jinping)がワシントンを公式訪問します。(米国には13日から17日まで滞在)中国のもっとも重要なパートナーであり競争国であるアメリカの関心を引き、また面食らわせてきた分野を、1.「リーダーシップ」2.「経済」3.「安全保障」4.「人権問題」の4つに絞り、分析しています。

1. 習氏の家族はエリートの出であることから、文革で迫害を受けた。ゆえに、習氏は成長するにつれ、社会の安定と経済改革への偏愛(predilection)を育んだ。早い段階での動きはありそうにない。
2. 中国は国内産業を外国企業との競争から保護していることで、オバマ大統領からも非難されてきた。一方で、中国の高官は、中国の経済力―1978年からGDPは10倍になったが―を過大評価することに慎重だ。中国の2011年の一人あたりGDP購買力平価で$8,400、ドミニカ共和国やタイ国よりも低水準だ。アメリカへのメッセージは、「われわれは依然貧しい。大目に見てくれ(Cut us some slack)」というものだ。
3. 中国の、近海への領土拡張を目指す行動を受け、オバマ大統領は、1月、軍事戦略の重点をアジア太平洋地域に移行することを発表した。アメリカはすでにヴェトナムとフィリピンの防衛に乗り出している。今のところ中国は目立った反応を示していないが、記事は、中国で、ネット上を中心にナショナリズムが瀰漫することに警戒感を示している。
4. アラブの春の後の中国の人権抑圧政策を受け、20人のチベット仏教の僧侶が焼身自殺したが、中国はアメリカを嘲笑する。「高い凶悪犯罪率はどうだ、イラクアフガニスタンの民間人の死者はどうなのだ」というわけだ。アメリカ社会は、法の支配、民主主義、自由、人権の擁護に価値を置く一方、中国は、大切なことは、社会の安定と全体の利益、中央集権だと考えている。習氏は、アメリカで40年前の、ニクソン周恩来との米中国交正常化における式典のような、演出に凝った式典に固執するだろう。

「マイクロレンディング、大きく考える」"Microlending Thinks Bigger"

 2010年1月に地震が襲ったハイチでは、85,000人を超える人が亡くなり、100万人以上の人が家を失いました。今もその傷痕は深く残っています。そんな中、マイクロ・ファイナンスで借りた資金を元手にビジネスを成功させた女性が冒頭紹介されます。
 「マイクロファイナンス」というのは、貧困の悪循環に陥った貧困国の女性の自立を支援するため、1976年にムハマド・ユヌス氏が「グラミン銀行」を創設することで始めたビジネス形態です。彼はその功績で2006年のノーベル平話賞を受賞ました。以降、3600以上のマイクロ・ファイナンスを手がける機関が設立されましたが、その経済的効果に疑問符がつくような複数の調査が紹介されています。曰く、借り手が教育や医療を受けられるようになるという効果はほとんどない、職を生み出すという効果は極めて限定的だ、30%(中央値)という高金利も相俟って、借入金が日々の生活の必要経費に消えてしまい、貧困を撲滅するという使命には暗雲が垂れこめている…。とはいっても、連帯責任制などの仕組みも含め、初めてマイクロファイナンスの仕組みを創ったユヌス氏のグラミン銀行は、今でも当該ビジネスでは、世界有数のものです。彼の名声はバングラデシュの首相に脅威を与え、首相は「法的な定年を過ぎている」ことを理由に彼をグラミン銀行頭取から解任しました。それでも、彼は世界を舞台にマイクロファイナンスを展開する意向を崩していません。ユヌス氏は、マイクロファイナンスを始めたとき、それが国中で、引いては世界中で展開されるビジネスになるとは思いもしませんでした。でも、今ではそれが現実となっています。ただし、近い将来に、世界から貧困が消えることはないであろうというのも現実です。そして、彼らに高金利で(at a price)金を貸そうと食指を動かす企業が存在することもまた、現実なのです。

enter the picture: (画面に入ってくる、から)擡頭してくる(文脈によっては「取り沙汰される」などの訳も。)
a far cry from...: very different from...
a control trial: 対照実験
sobering: 深刻で考えさせられる
at a price: 高い代価を払って(文字通りの意味でも、比喩的にも)

「ウーゴ・チャベスに挑む」"Challenging Hugo Chavez"

 ベネズエラで2012年10月に大統領選挙が行われます。注目候補は、ブラジル型の、社会主義と資本主義とを混在させた経済体制を目指すカプリーレス氏。彼は、政治活動のために投獄されたこともある人物です。現大統領のチャベスの過激な対外政策とはほとんど相容れない政策を掲げていますが、チャベス体制と同じく、米国―帝国主義のお化け、とチャベスは言及します―とは一定の距離を置く意向です。チャベスが、貧困を国家の第一の問題と捉え、一定の成果を上げたことをカプリーエス氏は評価しつつも(チャベスより前の政権は、数十年にわたり国民を貧困下に放置していました)、反資本主義的な、企業・財産を国有化する政策、28%のインフレ率を批判します。昨年、新たな国防大臣が「軍の第一の忠誠はチャベスの革命に向けてのものだ」と表明するなど、39歳と若いカプリーレスが当選しても、議会がその結果を尊重するかは依然として不透明です。

a common touch: 大衆への人気
The eagle doesn't hunt flies: 大物は小事にかかずらない。
a ways off: 道のり、へだたり(wayにsがついても単数扱い)
tenacity: determination
a thick hide: 厚顔
mayhem: chaos
in store: coming in the future; about to happen

論評「オバマvs.カトリック教会」Rich Lowry "Obama vs. the Church"

 「宗教の自由は、産児制限よりも重要だ」という主張。オバマ大統領の写真を、ヘンリー8世―自身の離婚を認めなかったカトリック教会に反発して英国国教会を設立、前妻を次々処刑したことでも有名―の肖像画に重ね、その宗教的「傲慢」を批難しています。オバマ大統領の医療制度改革で、すべての雇用者は、妊娠中絶薬や不妊手術も含む、避妊薬、避妊具を保険でカバーすることを義務付けられました。これは、もちろんカトリックの教えに背きます(The requirement runs counter to the teachings of the Catholic Church.)。教会はこの義務から免除されたとはいえ、カトリックの病院や学校は、教えに背くこと(what it does not preach)を実践するよう命じられました。「オバマは手を引かなければ、法廷で負けることになる」と怒りを露わにしています。

論評「石油がいかにプーチンを支えているか」"How Oil Is Propping Up Putin"

 1990年代にはカオスであったロシア経済。カオスからは抜けだしたものの、ロシアはチェチェン紛争など問題が山積しています。ロシアの経済回復の背景には、石油価格の高騰がありました。真のヒーローはプーチンではないというわけです。プーチンが権力の座についたとき(2000年)石油価格は1バレル27ドル、今では1バレル116ドルと、4倍以上にまで跳ね上がりました。ロシアは反政府勢力を弾圧していますが、この記事の興味深い指摘は「アラブの春」において、石油資源を持つ国―サウジアラビア、イラン、ベネゼエラ、ペルシャ湾岸諸国―は、リビアを除き、すべて体制を維持したという点です。短期的には、プーチンは3月の選挙に勝つことになる、しかし、プーチンの問題はむしろ長期的なものだ、と論評は続きます。ロシアの財政を維持するだけで、石油価格は1バレル125ドルであることが求められる。しかも、ロシアはこれから高齢化社会に突入し、年金や医療費が財政を圧迫する。労働生産性は極めて低く、新たな投資、新たな、石油に頼らない産業がこの国の成長には不可欠だ、と。

largesse: generosity
reactionary: 保守的だ(語の成り立ちから誤解しやすい単語)
be sacked≒be dismissed
levitate: rise and stay high