Taku's Blog(翻訳・創作を中心に)

英語を教える傍ら、翻訳をしたり短篇や詩を書いたりしたのを載せています。

TIME誌 February 27, 2012 まとめ(その1)

 金正恩キム・ジョンウン)現る」(カバーストーリー)"Meet Kim Jong Un"

 1983年生まれの、北朝鮮の若き新指導者についての特集記事。
 彼の母親であるKo Young Hui―2004年に乳がんで死去―は日本(大阪)で生まれ、1960年代の初めに(他の多くの在日朝鮮人と同じように)北朝鮮に渡りました。「北朝鮮は労働者の楽園だ」というプロパガンダが吹聴されていた頃です。日本生まれの朝鮮人は、社会の最下層に置かれていたのですが、踊り子をしていた彼女は金正日の目に留まり、2人の男子と1人の女子を出産。金正恩は彼女の次男です。彼女が亡くなった今も、彼女が日本生まれであることは秘匿されています。
 記事には、1980年代に北朝鮮に高給で雇われた日本人の料理人(フジモトケンジ(仮名)彼は帰国後「藤本健二」のペンネームで、北朝鮮での生活について四冊の本を出版しています。)が登場します。壊れた凧を直してやったのをきっかけに幼い金正恩と昵懇になり、少年時代の金正恩のエピソードがいくつか紹介されます。スイス留学から帰国した金正恩は、日本に帰国するフジモトに、11歳の彼が写った写真を贈ります。それは、彼が金正日の後継者となる前にあって、世界が知る、唯一の彼の写真でした。今、世界が知る彼の写真は、建国者の金日成によく似ています。(TIMEの記事とは別ですが、この記事(←リンク)では両者の顔の類似が、若き指導者の助けになることが論じられています。)個人崇拝の国家にあって、それは重要なことです。
 若い金正恩が、北朝鮮国民のためになるような政策を実行しつつ、古参の軍人たちを掌握できるか…軍の重要な幹部は、この質問をあしらいます。そう問うことは、北朝鮮を誤解することになる、体制自体、存続のために世襲を必要としていて、金正恩はその意味で必要な「顔」(front man)なのだと。金正恩が、政治の最新の情報に通じ、守旧派、古参の軍人たちを動かしていくことができるなどというのは幻想に過ぎない、彼は、ただのガキ(He's just a boy)で、ヤワ(He is soft)なんだよ、と。

(英語表現紹介)
call the shot: take the initiative
usher: guide
under/on the pretext of...: 〜という偽りの理由で、〜という口実で
confide: (信頼している人に)打ち明ける
the world over: all over the world
reticent: 寡黙な
a fairly well-known quantity: かなりよく知られた人物(通常は、an unknown quantityの形で用いる)
a safe pair of hands: 有能な政治家
a whiff of...: a slight sign of...
pariah: 社会の除け者(social outcast)
overarching: comprehensive; all-embracing
destitute: 困窮した
restive: 不満のために手が付けられなくなった
cajole: coax
the old guard: 守旧派
benighted: 無知な、暗愚な
stay abreast of...: 最新の事情に通じている
cadre:(軍の)幹部

金正日の料理人―間近で見た独裁者の素顔 (扶桑社文庫)

金正日の料理人―間近で見た独裁者の素顔 (扶桑社文庫)

北の後継者キムジョンウン (中公新書ラクレ)

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核と女を愛した将軍様〔文庫〕 (小学館文庫)

核と女を愛した将軍様〔文庫〕 (小学館文庫)

「太陽エネルギーに落ちる影」"Solar Eclipsed"(タイトルの"eclipse"の本義は、「(月食や日食のように、天体が他の天体を)食する、覆い隠す」です。TIMEらしい巧いタイトルです)

 アメリカでは、太陽エネルギー産業の成長が著しく、2011年の同産業の成長率は何と67%に達しました。一方、中国も国を挙げて太陽エネルギー産業を支援しており、2011年に中国が太陽エネルギー産業の一流企業に投じた補助金は300億ドル。太陽電池の回路部品の価格は、この5年で40%下落、今日、中国は、世界のソーラーパネルの60%を製造しています。ということで、アメリカの太陽エネルギー産業は悲鳴を上げており、「中国製品に関税をかけるべきだ」という議論もあるわけですが、技術力では今でもアメリカが上であるし、真の戦いというのは、アメリカvs.中国ではなく、太陽エネルギーvs.化石燃料エネルギーなのだ、そしてそれなら、どちらに軍配が上がるかは明らかだ、と記事は結ばれています。

(英語表現紹介)
be coming down the pike: 現れる、利用できるようになる(pikeは元来「高速道路」の意)
eat one's lunch: (米俗語)メタメタにやっつける
give somebody a leg up: (馬や壁に)登るのを助けてやる(ここではfigurativeな用法)
here to stay: 定着している
up for grabs: available for anyone who is interested


 「若者は如何に革命に負けたのか」"How the Youth Lost the Revolution”

 昨年ムバラク政権を打倒した、若者主導の革命。その若者たちの今日の「空回り」を紹介しています。国をゼロから(from scratch)するため、今の運動を続けることこそを前進と見なす彼らの姿勢は、大部分のエジプト人の肌に合わない(not square with most Egyptian)、無関係で見当違いな(irrelevant)ものに堕している。革命後の、政治腐敗、警察の暴力、軍による人権弾圧…彼らは殆ど何もできず、ここ最近のTahrir Squareやカイロ市街の占拠が彼らの支持者を増やすことはもうありそうにありません。違う戦略を採用し、新しい政治システムに参入しない限り、彼らはどんどん「無関係で」「人気のない」道へと外れていくでしょう。

(英語表現紹介)
accolade: 賞賛
greet: 〜に知覚される
attuned to...: receptive to or aware of
a point of honor: 名誉(面目)にかかわる大切なこと
tend to: attend to...(注意を払い、対処する)
foot soldier: 縁の下の力持ち
recourse: よすが、頼りとするもの
take to...:(困難の結果として)〜に行く
buy into...:(多くの人が信じていることを)信じる
hail:(特に新聞で)賞賛される
animosity: 強い憎しみ
attend: 〜と同時に起こる
inimical to...: harmful to..., detrimental to...