- 作者: アントン・パーヴロヴィチチェーホフ,沼野充義
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/08/21
- メディア: 文庫
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何てチャーミングな戯曲だろう。
登場人物たちの叶わぬ片思いの連鎖、循環。深い内面を抱えた個性豊かな人物たちの、ディスコミュニケーション。
大筋は悲劇的なのに、どこか可笑しい。以前、チェーホフの短編小説集を「ユーモアとペーソスが同居している」と絶賛したことがあったが(訳者は同じ沼野充義さんのものでこの記事です。)、この戯曲もその例外ではない。じわっと胸を包む読後感は、何時間も煮込んだ、温かくほろ苦いスープみたいだった。
次に読み返したらまた違った味わいがあるに違いないと思う。これから、折を見て読み返すことになるであろう大切な一冊。