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チェーホフ 『かもめ』

書評

かもめ (集英社文庫)

かもめ (集英社文庫)

 何てチャーミングな戯曲だろう。

 登場人物たちの叶わぬ片思いの連鎖、循環。深い内面を抱えた個性豊かな人物たちの、ディスコミュニケーション

 大筋は悲劇的なのに、どこか可笑しい。以前、チェーホフの短編小説集を「ユーモアとペーソスが同居している」と絶賛したことがあったが(訳者は同じ沼野充義さんのものでこの記事です。)、この戯曲もその例外ではない。じわっと胸を包む読後感は、何時間も煮込んだ、温かくほろ苦いスープみたいだった。

 次に読み返したらまた違った味わいがあるに違いないと思う。これから、折を見て読み返すことになるであろう大切な一冊。