人生に疲れてたばこをやめることにしたおじさんが
カラカラカラと飴を口の中で鳴らしている。
おじさんには小さな娘さんがいる。
百色の色鉛筆よりもふしぎな色をした
よろずの色の飴袋から
大切に一粒ずつ、
大きな粒を小さな口に頬張っている。
奥さんは
職場のデスクで、はっかの味のする飴を舐める。
コロン、コロンという音は確かで、
キーボードを叩く音に消されることがない。
おじさんは、奥さんともうすぐ離婚する。
あるいは、奥さんは、おじさんともうすぐ離婚する。
からん、からんと飴がなる。甘ったるい液が舌にのる。
みんなの人生は続く。飴には関係のないこと。