私たちはしばしば、目を逸らしたり、無関心でいたり、無知を装うことで、知っているのに知らないでいることができる。
私たちが、命ある生き物を殺し、その肉を食べて生を繋ぎ止めていることはその一つだ。そして、私たちの社会では、日々大量の肉が消費され、廃棄される。その供給のシステムが高度に機械化され、効率化されたものであることもまた、少し考えたら自明のことだ。(陽の光を見ぬままに食肉にされる鶏の話など、小学生でも「知って」いる。)
一方で私たちは、世界で10億人近くの人が飢えているということを知っている。毎日10万人が飢餓で死んでいることを知っている。同時に、私たちの社会では、毎日大量の食品が廃棄される。地球上の食物で、120億人が食べていけるという。(DVDのパッケージによると、1年に日本で廃棄される食糧は、途上国の食糧5,000万人分だということだ。)何という矛盾だろうか。これもまた、私たちが知っているのに知らないふりをすることだ。
このドキュメンタリー映画は、私たちに「知らないふりをするんじゃないよ」と警鐘を鳴らす。映像は強力だ。翻弄される農業従事者、システマティックに処理される鶏に、不安を覚える。グローバル企業は、効率と利潤の追求を旗印に、どれほど「不自然な」方法で私たちに食糧を供給していることか。それは時に、地場の伝統農法や漁法を破壊する。自然の資源は無限ではない。時計の針を逆には回せない開発がある。
あるいは、私自身が不勉強から知らなかった不条理も告発している。その一つは、アマゾンにおける大豆の栽培だ。ブラジルでは、1975年以降これまでに、フランスとポルトガルとを合わせただけの熱帯雨林が伐採され、その土地に合わない(したがって人口肥料を混ぜた)大豆畑に変えられた。その大豆はヨーロッパに輸出され、多くは家畜の餌にされる。その一方で、ブラジルの貧しい地区に住む人は、飢えに苦しみ、衛生的な水も手に入らないでいる…。
無知と日頃の無関心を恥じ入った作品だった。国連の担当者が言っていたように、これほど不当な食糧の配分がなされるメカニズムは、つまりこれだけの食料生産がありながら依然として大量の飢餓が存在することは、殺人と同じだ。
巨大な資本は、利潤を最大化するように運動する。誰かが食糧にありつけず飢えていても、私たちには偽善的に募金などして良心の呵責をごまかすことしかできないのか…。
せめて、飢えを生み出す世界の構造について、もう少し勉強しようと思う。
世界の半分が飢えるのはなぜ?―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実
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なぜ世界の半分が飢えるのか―食糧危機の構造 (朝日選書 (257))
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