[書評]
- 作者: ミランクンデラ,Milan Kundera,西永良成
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1995/10
- メディア: 単行本
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この小説が好きだ。
私は、思考が挑発されるのを感じるから。(つまりは、自らの信念だと思っていたものが、単なる抽象にすぎなかったのではないかとドキリとさせられるから)
私の、言葉にならなかった言葉が語られるのを聞くから。
ほとんどいつも、にやりとするほどに可笑しく、たまげるほどに下品で醜悪だから。
○○○○
クンデラが初めてフランス語で書いた記念碑的小説。自由奔放でチャーミングな物語だ。
何という狡猾なユーモア!意地悪な風刺!!
…「ご婦人がいらっしゃるまえで、わざとらしいほど華々しい考えにこだわる、そのこだわり方はきみのリビドーの憂慮すべき逆流を示しているんだよ」(pp.33-34)
声を上げて笑いそうになった。私もそんな諧謔を弄した軽口を言われそうだ、この小説が好きだとなんて言っていたら。
このディレンマのか細い溝の底の暗渠で、クンデラは哀しく笑っている。