岩井俊二監督 『スワロウテイル』

僕が子供だったとき―80年代の終わりから90年代の初めにかけて―小学校では「未来の日本」をテーマにした絵を描かされたものだ。絵の中では、翼のある車が空を飛んでいて、華やかな空中庭園があった。後の子供たちもこんな絵を描かされたのだろうか。いや、き…

TOEFL エッセイ 練習1

模範解答と比較したらとても下手なエッセイですが(模範解答を読んだら恥ずかしくなりました)、これから上達していくという決意をこめてここに公開します。30分が制限時間ですが、少しだけオーバーして書きました。辞書などは勿論使っていません。 Do you agr…

2008年 一橋大学 自由英作文模範解答

★ 2008 一橋大学 前期 Write 120 to 150 words of English about one of the topics below. Indicate the number of the topic you have chosen. Also, indicate the number of words you have written at the end of the composition. 1. Japanese people n…

村上春樹 『約束された場所で underground 2』

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2001/07メディア: 文庫購入: 14人 クリック: 73回この商品を含むブログ (126件) を見る 宗教的理想郷の対極にある現実世界は、入り組んでいて、理不尽だ。それが…

(暫定) 2013年度 京大英作文模範解答

今年の京大入試の英作文を僕がざっと訳したものです。参考にしてくだされば、あるいは、忌憚なきご批判をちょうだいできれば。 今日、睡眠不足は見過ごせない問題となっている。原因の一つは、社会全体が深夜も多くの人が起きていることを想定して動いている…

物語の断片

人は生きられなかった生を生きるために文学を書くのだ、と誰かが書いていて、思わず考え込んだ。 僕が生きられなかった生とは、偶有的な生の集合だ。必然的に見える生を生きる僕が、偶有的な生の集合の元をひとつ手繰り寄せ、その生を物語ることで生きてみせ…

平野啓一郎 『空白を満たしなさい』

空白を満たしなさい作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/11/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 17人 クリック: 600回この商品を含むブログ (62件) を見る 生きていることの掛け替えの無さが、鮮やかに描かれたすばらしい小説。 ある…

夢の話

こんな夢を見た。 山の頂で、少女が音楽を待っていた。黄昏が近かった。 頂の向こうからロープウェイが登ってきた。中では老紳士がフルートを吹く仕度をしている。少女に音楽を届けてやろうと大急ぎで銀色の楽器を組み立てている。 老紳士のフルートの調べは…

平野啓一郎 『私とは何か―「個人」から「分人」へ』

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/14メディア: 新書購入: 19人 クリック: 299回この商品を含むブログ (78件) を見る 通常私たちが、自身を「私」として捉える時、それは統合され…

チャールズ・ディケンズ 『クリスマス・キャロル』

クリスマス・キャロル (新潮文庫)作者: ディケンズ,村岡花子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/12/02メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る 僕は年末年始が大嫌いだった。欧米で「クリスマスが嫌い」というような偏屈…

チェーホフ 『かもめ』

かもめ (集英社文庫)作者: アントン・パーヴロヴィチチェーホフ,沼野充義出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/08/21メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る 何てチャーミングな戯曲だろう。 登場人物たちの叶わぬ片思いの連鎖、循…

スラヴォイ・ジジェク 『ラカンはこう読め』

ラカンはこう読め!作者: スラヴォイ・ジジェク,鈴木晶出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2008/01/30メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 216回この商品を含むブログ (84件) を見る 本書は、ラカンの難解な概念の解説書ではない。帯にあるように「入門書…

野間俊一 『身体の時間 〈今〉を生きるための精神病理学』

身体の時間―“今”を生きるための精神病理学 (筑摩選書)作者: 野間俊一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/09メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (7件) を見る 精神科医が心について記述するとき、彼らは私たちの身体的な側面、動物的な…

廣松渉 『今こそマルクスを読み返す』

今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書)作者: 廣松渉出版社/メーカー: 講談社発売日: 1990/06/12メディア: 新書購入: 10人 クリック: 65回この商品を含むブログ (46件) を見る 私はマルクス主義者ではないし、廣松とも世界観を異にする。それでも、本書…

沼野充義編著 『世界は文学でできている』

世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義作者: 沼野充義出版社/メーカー: 光文社発売日: 2012/01/18メディア: 単行本 クリック: 26回この商品を含むブログ (17件) を見るチェーホフやナボコフの翻訳で著名なロシア文学者の沼野充義氏と、作家…

秋の終わりに オリオン座の流れ星

三日前、オリオン座の星雲で流れ星が見られると聞いた。深夜の零時から一時頃が見頃だというので、私は零時半頃に仕事から帰ってから、家の前でずっと空を見上げていた。 オリオンには一等星が二つあるが、随分と小さくて弱々しく光っていると思った―と同時…

チェーホフ短篇集 沼野充義訳

新訳 チェーホフ短篇集作者: アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ,沼野充義出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/09/24メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 10回この商品を含むブログ (19件) を見る さまざまなテーマの―したがって、それらの魅力…

メル・ギブソン監督 パッション・オブ・ザ・クライスト 岩井俊二監督 ラブレター

The Passion of the Christ(『パッション』)10月3日鑑賞 邦題は『パッション』。英語で、the Passionは、イエス・キリストの受難を表す。メル・ギブソン監督のアメリカ映画だが、セリフはすべてラテン語とアムル語。当時の空気感を、イエスの存在感を立体…

『哀しみ』 (東京新聞公募の「300文字小説」)

東京新聞の日曜版に連載の「300文字小説」に応募した作品です。タイトルは、ちょっと考えあぐねたけれど、『哀しみ』としました。日曜の朝からこんなの喜んで読む人いないと思うけど、まぁいいや。 冷たい雨が落ちてきた。Tは、カーキー色の上着の中で、身を…

月夜、酔った夜に。

月の光を眺めていた。光雲が月を霞めて漏れる光は淡く、淡く酔った私を撫でている。真暗な雲と眠らぬ夜を寡黙に照らす月を人は太陽の輝きの反映と解明しシャトルをそのみじめな衛星に飛ばし潜在敵国をして威嚇せしめた。人類は途方もなく狡知で途方もなく愚…

岩井俊二 『ヴァンパイア』

インターネットで自殺志願の女を募り、彼女たちの血液を抜いて、その血液を飲む…。これはもちろん、利他的な自殺幇助では全然なくて、歪んだ性欲の発露、利己的な行為に違いない。実際、ウェブサイト上で、「ヴァンパイア(吸血鬼)」と名指される彼自身、そ…

高校生の英語の課題のエッセイを書いて添削してもらいました。

職場に、高校生が取り組む英語のエッセイの課題用紙があり、気紛れで5分ほどでダダダと書きました。稚拙な英文ですが(辞書も使っていないどころか推敲もしていない)、上司のアメリカ人の英語の先生が添削をしてくれました。僕の普段の英語の弱点をつくよう…

英日訳 ミシェル・フーコー『狂気の歴史』序文(途中まで) Michel Foucault "Madness and Civilization" 

フーコーの『狂気の歴史』の英語版の、序章の日本語訳です(途中まで)。僕にとって非常に興味があるテーマであること、残念ながら日本語訳に誤りが多いという評判があるということで、英語で持っています。序文を途中まで(Amazonでなか見!検索ができると…

Paul Auster ”Invisible”

Invisible作者: Paul Auster出版社/メーカー: Faber & Faber発売日: 2010/06/24メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見るタイトルの“Invisible”とは、英語で「見えない、不可視の」という意味である。見えないというのは、舞台になっている、1967…

村上春樹 エルサレム賞受賞スピーチ(『壁と卵』)

(村上春樹がエルサレム賞授賞式でこのスピーチをし、イスラエルの新聞のウェブサイトに英文が公開された2009年2月21日の直後に私がそれを大急ぎで和訳したものです。もとはグーグルのブログで公開していました。なお、村上本人の元の日本語の原稿と、ジェイ…

ジャン・リュック・ゴダール 『気狂いピエロ』 "Pierrot le Fou"

結婚している男と、かつての男の愛人の女との不倫と逃避行を描いた、ジャン・リュック・ゴダールの1965年の作品。美しい構図が印象的で、場面場面に応じて工夫された色使いと光のコントラストが駆使されている。どの場面も美しい一枚の絵のようで、この映画…

黒澤明 『七人の侍』

桁外れの映画だ。 今まで自分が時代劇と思っていたもの、大河ドラマはなんだったのか。確かに、これまでの時代劇が鼻につくことはあった。現代のテレビ文化にぴったり合うように、現代人が付け加えたチープな華やかさ。荒々しさ、猛々しさ、血生臭さのない殺…

烏賀陽弘道 『「朝日」ともあろうものが。』

「朝日」ともあろうものが。 (河出文庫)作者: 烏賀陽弘道出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/06/04メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 33回この商品を含むブログ (17件) を見る マスコミが批判されるようになって久しい。ネットが普及する前も、テレ…

黒澤明 『生きる』

「生きる」とは何であるか、これほど困難で切実な問いは他にない。 この作品の主人公は、胃癌に冒された、30年間無欠勤の役所職員だ。真面目ではあるが、日々を無難に、惰性で過ごしてきた彼を、黒澤は「本当の意味では生きてこなかった」と断じる。或いは、…

フォークナー『熊』 William C. Faulkner "The Bear"

熊 他三篇 (岩波文庫)作者: フォークナー,William Faulkner,加島祥造出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/06/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (8件) を見る 表題の中篇『熊』に加え、登場人物等関連した3作の短篇を所収す…